涼宮ハルヒ シリーズ  二次創作
キョン子の探索
〜第二話〜

ぶん:たろた子
え:あまのこおり子

ホームルームから一時間目の授業を無難に過ごした後、俺はのっぴきならない事態に直面していた。普段ならばどうっていう事のない組し易い相手なのだが、今や実力未知数の強敵として俺の前に立ちはだかっている。
俺は尿意を感じていたのだ。
勿論トイレに駆け込めば解決するのだが、行く先は当然女子トイレな訳で、大体女子高となったこの場所には男子トイレなど存在する訳もない。職員用の男子トイレがあるかもしれないが、そこに入る訳にもいかないだろう。
そんな訳で俺はさっきから不審な眼を向けられながら、女子トイレの前を意味も無くウロウロと歩き回っていた。しかし、いつまでもこうして問題を先延ばしにするのにも限度はあるし、いずれは乗り越えなければならない壁だ。
意を決して未知の扉を開け中に入り込めば、手洗い場の前で鏡に向かい身嗜みを整える女子生徒達や、並んだ個室のピンク色の壁が眼に眩しい。
ああ、俺は本当に女子トイレに脚を踏み入れたんだなと実感する。しかも正面から堂々とだ。
感動というよりも、場違いな所に迷い込んでしまったという気まずい思いが先に込み上げる。周りはだれも気にした様子もないのに居づらい雰囲気だ。
しかし、ここはまだ未知の世界を僅かに一歩踏み入れただけなのだ。
逃げるように個室へと駆け込んで、一人になってホッとする。和式のトイレが設えたブースを見渡し、見慣れない三角のコーナーから丸めた何かがはみ出しているのにギョっとなる。今朝、自分で履いた我が校指定の青いスカートを見下ろし溜息がでる。今やたかだか小さい方の用を済ます為だけに、一々しゃがんでしなければならないのだ。
憂鬱な気分でスカートを捲り上げて、中から縞模様のパンツを引きずり出すべく指を掛ける。黒い靴下に包まれた両脚の間で丸まっている小さな布地は縞模様だ、こんなものをずっと履いて過ごしていたなどと信じたくない。
それから、なるべく意識しないように便器に跨る。このままだとスカートに掛かったりしないだろうかと不安になって、自分で布を捲くり上げて押さえて…何をやっているんだろうなと、情けない気分にもなってくる。立ったまま出来る男と違って何とも不便で、プライドが傷つく事態ではないか。


それでどうすれば出るのだろか?とりあえずいつも通りに身体の欲求に従って排尿を促す命令を送ってみれば、流れ出して来たのはどこか心細い勢いで…何とも勝手が違い戸惑ってしまう。しっかり狙いを定めていないのが落ち着かないし、いつもより奥から出している感覚は勢いが弱まったら脚に垂れるんじゃないかと不安になるものだ。
それでつい両脚を離そうとして、いつもよりも柔らかに動く関節の動きに、また戸惑いを覚える。
ちょっとした些細な事でも身体の違いを実感してしまう。
程なく出るものは全部出きって、それじゃあ立ち去ろうかとパンツをすぐに上げる訳にもいかない。終ったならば拭かなければならないのだ。そうしろと濡れてる感じが如実に伝えてくる。
なるべく意識しないようにと紙を小さく折り畳んで、股間にとりえず運んでいく。どの辺りをどの位に拭いたら良いかなんて検討もつかない。
まぁ適当にササっと始末して…パンツを履いて…個室を抜け出せば…。
すまん、好奇心にはやっぱり勝てない。
スカートを再びたくし上げて覗きこもうとするが、自分の視点からだとどうにも上手く見えないものだ。それで仕方なしに諦めるのかといえばそういう訳でもなく、つい手を探らせて柔らかな毛の感触と僅かな裂け目の存在を確認し軽く淵をなぞってみた。ゾクっと今までに感じたことのない不思議な恍惚感が背筋を走り抜ける。
いかんいかん…学校のトイレの中で…しかも短い休み時間で何を始めようとしているんだ俺は…。
後ろ髪を引かれつつもパンツを履き直して個室を後にした。この時のモヤモヤが残って二時間目の授業に身が入らなかったのは言うまでもない。

その後も細やかな出来事がザコキャラの如く次々と現れてはそれを倒し、どうにか新たなる立場でレベル2を迎えたと思えるようになった頃には一日が終っていた。精神的にも肉体的にもかなりの疲労を感じていたが、ここからまだやるべき事がある。そう、ここからが今回の変化の核心に迫る時間、SOS団の活動時間である。
いつもの文芸部部室に辿りつくとプレートの下に『with SOS団』の文字を発見した。舞台が女子高に変わった今となっても、その根城はどうやらここで間違いなさそうだ。
長門はいるだろうか?古泉は…まぁ居ないだろうな…機関から派遣された別の女生徒がいる可能性は高そうだが。
いつものように扉を開けると、中に居たのはパイプ椅子に腰掛けた物静かな小柄な女の子の姿。長門だ。いてくれて良かったとホッと一安心する。
一瞬、読んでいた本から眼を離してこちらを一瞥すると、また本の世界へと帰っていく。いつもの動作が安心できる。変な誤作動とかいうのはなさそうだ。
俺は挨拶もそこそこに長門に近づくと、いきなり話を切り出す。
「あのな…長門…。ひとつ確かめておきたいんだが、お前はその…宇宙人…なんとか思念体とかいうのに造られた人間型のアンドロイド…で合っているか?」
確認するように尋ねる。
「そう。以前に話した通り…」
本を読んだまま短い答えが返ってくる。
どうやら、この世界でも長門は異星人であり、俺にその正体を知らせる位の仲である事が確認できた。そうとなればこれ以上ない心強い味方がいるだろうか?
俺は自分が本当は男で、それが当然である世界から迷い込んでしまったみたいだという事を伝えた。俺が話している間も長門は本から視線を外さない。
「了解した。確かにあなたからは微かにこの世界とは異なる情報構成が認められる。けれど、その肉体は以前からここで活動しているあなたの身体と同一の物。あなたの言っている事が正しい場合、記憶などの精神的な情報だけが時空を転移して宿ったという事に他ならない」
成る程な…だとして原因は何だ?ハルヒの能力とかいうヤツか?
「涼宮ハルヒによる大規模な情報干渉は現在に於いて確認されていない。今回の事象にそれが直接的に関与したものだとしたら、最近ではなく以前に行われた事が原因だと思われる」
以前ってどの位前だ?
「少なくとも数ヶ月は前」
それじゃ原因を特定するのは難しいな。長門、お前の力で俺を元の世界に戻したりは出来ないのか?
「不可能。異世界精神転移という技術は確立されていない。また例えそれが可能であったとしても、元の世界の正確な位置情報は不可欠」
成る程、そうか。答えを聞いてますます絶望的な状況である事が解ってきた。
何度目かの衝撃に頭を眩ませていると、扉が開かれて朝比奈さんがその麗しいお姿を現した。
「こんにちわ〜」
こんにちは朝比奈さん。あなたはどこの世界でも輝いていらっしゃる。
「キョン子ちゃん、まだ着替えてないの?涼宮さんが来るまでに着替えないと怒られちゃいますよ!」
朝比奈さんは入室するとすぐに洋服ハンガーに掛けられたメイド服の一つを取ってこちらに手渡してくる。
着るんですか?俺がこれを?
薄々こうなるんじゃないかなと思っていたが、まさか毎日やらされていたなんて…。そういえば元の部室よりもやけに衣装が充実している事に今気がついた。
まぁ、それが日常であったというならば恥ずかしいがそれに従おう。何せハルヒを怒らせて事態が更に難しくなる事は何としても避けたいしな。
だけど、メイド服なんて物の着方が解る筈もなく、朝比奈さんが着るのを参考にしながらと目を向ければ、着るという行為の前段階として脱ぐという行程が存在している訳で、下着姿という大変結構な代物を目撃してしまった。まぁこれは不可抗力というか役得というか…。普段ならば真っ赤な顔で喚かれて、慌てて部室を飛び出さなければならないのだが、今は女同士という事で着替えの様子をじっくりと眺める事だってできるのだ。なんだか覗いているみたいで悪いような気もするだが…。
それにしても、大きいな…と自分の慎ましい膨らみと比べてしまう。別にそれが自分にも欲しいとかって訳じゃないぞ。
目を奪われている内に朝比奈さんはどんどんと着替えを続けていく。こっちはまだ下着姿のままメイド服をハンガーから外しただけの状態だ。慌てて見よう見真似でファスナーを下ろし、スカート部分から被って…っと…髪がポニテだから頭が意外につっかえるぞ。ジタバタとしていると、服が引っ張られた。着替え終わった朝比奈さんが手伝ってくれたのである。ああ…救いの女神とはやはりあなたの事なのですね。
朝比奈さんは手伝いの手をその後もゆるめず、背中のファスナーを上げてくれ、胸のブローチを止めてくれたりと至れり尽くせりであった。ありがとうございます、朝比奈さん。
「もう…キョン子ちゃんってば、そんな他人行儀な言い方しなくても…。できたらお姉さんと呼んで欲しいかな…」
は?何ですかその設定?
「私達は姉妹の誓いを結んだ仲でしょ…」
アニメやゲームのような虚構の世界で耳にする事がある、女子高伝統で先輩後輩の間に結ぶという義理の姉妹制度。まさかそれが確立している世界になっていようとは思わなかった。マリア様でも見てるのか?
しかも、そんな姉妹の間柄で、俺と朝比奈さんが結ばれていようとは…この世界の俺め…羨ましいぞ。
「みくるお姉さま…」
新なる関係を噛み締めるように、俺はすぐさま要望に応えてそう言ってみた。
その瞬間、朝比奈さんが両手でいきなり抱きついてきた。頭が抑えられて軽く撫でられる。
柔らかい胸のクッションに顔が押え付けられ、その弾力と甘い匂いが一杯に広がり心が蕩けてしまいそうだ。
そんな至福の一時に終了の鐘を告げるのは、ドアが開く音という形で訪れた。
「ちょっとぉ〜。部室でサカるの禁止!って言ったでしょぉ〜」
ハルヒが不機嫌をたっぷりと含有した声と共に登場し、朝比奈さんは慌てて俺の側を離れた。ハルヒは大股でイライラしながら団長の三角錐がついた席に着き、苦虫を盛大に噛み潰したような顔で机に備え付けられたパソコンを弄り始めた。こちらの世界でもコンピュータ研から奪ったものなのだろうか?
さて、カリカリとしたハルヒには近づけないし、朝比奈さんはこちらでもお茶を淹れる準備に余念が無いし、長門は本の世界を旅するのに夢中だ。いつもなら様々なボードゲームを披露して、興味は別としても俺を飽きさせる事のない古泉はいない。
そうすると俺が出来る事と言えば、元の世界と変わらないSOS団のいつもの光景をぼんやり眺めている事だろうか?いや、ここはやはり姉と慕う人物の手伝いをすべきではないだろうか。お揃いの衣装も着ている事だし。まぁその事は余り考えたくもないんだが。
薬缶を乗せたコンロの前で、湯が沸くのを忠実に待ち続ける朝比奈さんの側へと行くと、
「キョン子ちゃん。ちょっと待ってて」
急須にお茶の葉はすでに入っているし、手伝う事は確かになさそうだ。かと言って朝比奈さんと話をするのも、不機嫌なハルヒが聞いているだろうから憚れるところだ。
やがて音を立てて沸騰を知らせる合図に素早く火を止めて、ゆっくりと急須に湯を注いでいく。その間に湯飲みに一度湯を注いで暖めるとすぐに捨て、今度は急須から茶を注いでいく。この世界の朝比奈さんもお茶の淹れ方を研究するのに余念が無いようだ。
しかし、ここで普段とは違う事が起こった。ハルヒ用の湯飲みをお盆に載せた後、朝比奈さんはそれを運ばずに、
「キョン子ちゃんお願い」
と声を掛けて来たのである。どうやら、ここでの給仕役は俺の仕事らしい。それが日常というのならば引き受けるとするか。
団長席まで出前をすると、ハルヒはジト目で俺を一瞥しフンと鼻を鳴らしてから湯飲みに口をつけた。
「お茶の味は認めるけど、ここは神聖なSOS団の拠点なのよ…ふしだらな行為は謹んでよね…」
「あ…あれは…ふしだらとかそういう事じゃなくて…姉妹のスキンシップです…」
朝比奈さんがハルヒに反論する。普段ならばお目にかかれない光景だが、ここではいつもの事なのだろうか?しっかりと決意を秘めた朝比奈さんの瞳に、姉としての立場が垣間見えて…何だろうか胸がキュンとして嬉しさが込み上げて来る。しかし、そんな朝比奈さんなりの強気も、次のハルヒの一言で脆くも崩れ去る。
「ふぅ〜ん…。姉妹を持ち出すんだぁ〜。だったら私もお姉様に言いつけちゃおうっかなぁ?『みくるちゃんが妹とハレンチな行為をしてます!』って…」
忽ちにいつもの『ふぇ〜』と言うセリフでも似合いそうな当惑な表情になる朝比奈さん。ここまで怯えるとは、ハルヒの『お姉様』って一体何者なんだ?
「さてと…んじゃ…」
バサリと音がしてスカートが捲くられた。何をって…俺の履いているメイド衣装のスカートがだ。
「ふーん…今日は水色の縞パンねぇ〜」
いきなり何をするんだ!お前は!俺の抗議の声明にハルヒは逆に主張してきた。
「何って、いつもの身体検査じゃない…今日は体育無かったんだからいいでしょう。それよりキョン子、縞パンの時は縞ニーソにしてって言わなかったかしら?」
知らねぇよそんな事は…。いつまで覗いてるんだ…段々と恥ずかしくなってくるだろ…。
スカートを押さえて無言の抗議をする、しかしハルヒはそれをサッと避けると、俺の背後に回りこんで何と胸を掴んできた。俺の胸には今や女の子の膨らみなんてモノが存在する訳で…。何だその…力加減も絶妙で…き…気持ちよくなってくるぞ…。
「相変わらず成長しないわねぇ〜。でもそこがキョン子らしくていいんだけど…」
う…うるさいな…それより、これはお前の言うハレンチな行為には当たらないのかよ!?
「だからぁ身体計測でしょ…。団員の成長を確かめるのも団長としての大切なお仕事だって…前から言ってるじゃないの」
暫く絶妙に揉み続けられて、俺は気持ちよくなって顔が真っ赤になるのを感じて可愛らしい声で呻きそうになって…。トロンとする眼でお姉様に助けを求めるが、いつものアウアウとした顔で見守るだけで行動してはくれなかった。よく見ると羨ましそうな感じにも見えるのは気のせいだろうか?
この男としてのアイデンティティを含んだ危機を救ったのは、またしても扉の開閉によってであった。
「すいません。遅くなってしまって…」
扉の向こうから現れたのは俺の知らない女子生徒であった。スラリと長身で肩まで髪を伸ばした女の子が、どこかで見覚えのある作り物のような笑顔で部室の中に入ってきた。まぁ、誰だろうがとにかく助かった。ハルヒの手が止まっているのを幸いに、俺はその包囲網を脱出することができた。
「おや?お取り込み中みたいですね。出直した方がいいでしょうか?」
「いいわよ、イツキちゃん。それよりも、これで全員揃ったから、やっと本日の議題を始められるわね!」
ん?イツキ?どこかで聞いた名前だな…。俺は改めて知らない団員の顔を見た。
「どうかしましたか?」
芝居がかったセリフにも聞き覚えがある。まさか…な…。
しかし、俺がそんな疑念を推察する暇を与えまいというのか、ハルヒの次からの言葉に驚愕してそれどころでは無くなった。
「これまで、あたし達SOS団は様々な事をしてきました、来るべき行事に於いても同様の事が求められる事でしょう…」
行事?嫌な予感がするが…何の行事だ?
「何って?キョン子…あんた今日は随分と寝惚けてるわねぇ〜。この時期の行事といったら文化祭に決まっているじゃないの!」
文化祭だと?まさか…この世界は今そんな時期なのか?地球が自転しているのに今気付いたように、頭の中が凄い勢いで回わるのを感じる。
そういえば、冬の筈なのにやけに暖かい事や、学内が妙に慌しかったという事実に今思い当たった。今かよ!とツッコミたい諸氏に主張したい、朝起きて体の性別が変わるという大問題に直面しているのにそれ以外の変化にまで気が回る訳ないだろうと!!
俺が面食らっている間にもハルヒの話は続き、SOS団は映画制作をする事が告げられた。
あの映画をもう一度作れというのか…。あの時の顛末を思い出して、盛大な偏頭痛に見舞われる。
まぁ、ゲーム製作を何度もやり直す羽目になるよりか幾分かマシだと思う事にしよう。そうでなければやっていられん。
俺は今日何度目かになる溜息を吐き出した。

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